『足守川桜八景』について

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「足守川桜八景•饗宴」M4号

 

『足守川桜八景』について

昨年の四月中旬のことである。

日暮れ時、いつものように仕事を終え、国道180号を総社に向かって走っていた。
足守川を越える橋を渡りかけたところで、右手奥に何か気になる光景が一瞬目に入った。
それは川沿いの並木のシルエットのようであった。しかし止まるわけにもいかず、
その場は通り過ぎた。写真を撮るにしても、もうだいぶ暗いと思ったからでもある。
少し走ったが右手奥の印象が消えない。車をコンビニの広い駐車場でUターンさせると、
駄目元の気持ちで現地に向かってみた。

やはり引き返してよかった。私の目の前に残りわずかな光に照らし出された桜並木が、
圧倒的な存在感で佇んでいた。
逆光のため満開の桜は昼間とは違う凄みのある表情を見せていた。

山の端に夕陽が沈むまでのわずかな時間に、何枚かの写真が撮れたのは幸いであった。
開花期からすれば葉桜になる寸前の終盤である。しかも日暮れ時。
こんな条件下で桜の美しさ、凄さに束の間浸れたのは、単なる偶然とは思えない。
これは描くしかないな、それが素敵な逢瀬を用意してくれた神様の粋な計らいに答える術であろう。

翌日、今度は午前の早い時間に現地を訪れてみた。

すると足守川沿いの実に変化に富んだ状況の中に、いくつもの桜の樹を散見することができた。
昨日は時間もなかったので、河川敷の桜並木しか見られなかったが、
この時は多様な桜の姿に感嘆しっぱなしで、とても一枚だけでは思いの丈は表しきれない、

そうだっ、連作にしよう!と思い至った。

こうして『足守川桜八景』のアイディアが決まった。
次々と絵の構図を思い浮かべながら写真を撮っていく。
残照とは違う春の陽射しの中で桜は穏やかな表情を見せていた。

ところで私は毎年この時期、花粉症に苦しめられているので、楽しく花見をした記憶がない。
そんな関係で私にとって桜は長い間縁遠い存在であった。
例外的に2点の小品に桜を描いたことはあるものの、
これまで私の描く花と言えば、向日葵か蓮で夏の花と決まっていた。
それが今回、浮世絵の名所絵に倣って『足守川桜八景』のシリーズを無理なく描けたことは、
今後の風景画制作の転機となるかもしれない。

泉谷淑夫

 

こんにちは。管理人の ふぅです。

 

今週、日本のあちらこちらから 桜の開花宣言が届いていますね。

今日は、そんな季節にぴったりの

泉谷画伯による、『足守川桜八景』について、をお届けしました。

 

「美しい驚き 泉谷淑夫展」@岡山•アートガーデン

いよいよ、来週の3月20日(水•祝日)からです。

 

>>>展覧会の詳細は、こちらからどうぞ。

 

ぜひ、ご来場ください。

(ふ)

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『美しい驚き』

『美しい驚き』泉谷淑夫・著/出版芸術社/2016/11/08 /定価 3000円+税