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《ボレロを聴きながら》

 

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「ボレロを聴きながら」

ここのところ寒さが本格的になってきました。
首都圏にも久々に大雪が降ったほどです。
こんな季節は暖かい部屋でお気に入りの音楽をかけ、
ロッキングチェアで膝に猫を乗せ、
温かい紅茶でもすすりながら読書し、
ゆったり過ごしたいものです。

と書いたものの、私にはそれは夢のまた夢で、
現実は絵の制作や授業の準備、
古い物の片づけに追われる毎日です。

そこでせめてそんな気分に浸れればと描いたのが今回紹介する
『ボレロを聴きながら』です。

実はこの絵、ある年の妻の誕生日に贈ったものです。
誕生日が2月7日なので、2月の絵として選んだ次第です。

描かれているのは妻と愛猫のムク(無垢)の横顔です。
ムクは昨年の7月にも登場したことがあります。
知り合いから生まれた直後にもらった猫なので、
赤ちゃんの時から妻が愛情を注ぎました。
そのせいか彼女への信頼は絶大なものです。
私にもなついていますが、
あくまで「仲の良い遊び相手」という感じです。

毎年妻の誕生日が近づくと、頭を悩ませます。
長年連れ添っていると、贈りものを何にするかで悩むのです。
昔はバッグとかアクセサリー、
エプロンとかスカーフ、
財布とかマグカップ等々、
色々と贈りましたが、
歳を重ねるとだんだんと物は不要になってくるのです。

私の場合も普段からほしい物は買ってしまっているので、
誕生日のプレゼントは特に要らないよと言うことも多いのですが、
立場が逆になると何も贈らないというのは勇気が要るものです。

そこである時期、「妻のために描いた絵」を送ることにしました。
それなら「世界中でただ一つの贈りもの」になりますからね。
その習慣はしばらく続きましたが、
その中でも私が気に入っているのが、この絵なのです。

まずはこの絵の画面の形を見てください。

珍しいでしょう!
変形7角形です。

画面は小さく、14×15㎝ほどです。
この画面に何を描くかを考えた時、
妻と猫の組み合わせを、
ぎりぎりまでトリミングした構図で描くことを思い付きました。
妻がムクを肩に抱いた写真を元に構図を練り、
画面からは読み取れない状況を題名で補足することにしました。

『ボレロ』とはラベルが作曲したバレー音楽で、
一定のリズムと繰り返しのメロディが印象的な曲です。

この絵を描く数ヶ月前、岡山県立美術館で、
点描で絵を描くワークショップをやった時に、
バック・ミュージックとして流していたのがこの曲だったのです。
以来、この曲が気に入っていて、
画中の妻と猫にも聴かせてみたくなったというわけです。
この絵を見る皆さんにも『ボレロ』のメロディが聴こえてきたら嬉しいのですが・・・。

この絵のポイントは、
向きが交差している二つの横顔の片方が光りを受け、
もう一方が陰に入っているところです。
陰に入った猫の表情は、とりわけ私が気に入っている部分です。

部分図も載せましたので、
音楽に聴き入る?猫の表情をご堪能ください。
実はこれも私が得意とする「先に額ありき」の作例で、
使用した額縁は京都の画材屋の主人が精魂こめて造った高価な手作り額縁です。
額に入れた状態も合わせてご覧ください。

泉谷 淑夫

 

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