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《黄色いマフラー》

 

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「黄色いマフラー」

だいぶ寒くなってきました。
皆さん、風邪をひいていませんか。
この季節、無理はいけませんよ。
寒いのを我慢していたり、これくらい大丈夫と思っていたりすると、
翌日「あれ?ちょっとのどが、はなが、寒気が・・・」となるのです。
「寒い時は首を温めるのが一番!」というわけで、
この季節にとってもふさわしい?一枚を紹介しましょう。

題して《黄色いマフラー》。
と言っても、そのようには見えませんか?そうでしょうね。
実はこの絵、横に倒して見るのが本来の見方なのです。
そこで横に倒すと《横たわる裸婦》になるのです。
「なーんだ、やっぱりそうじゃない!」と思われた方は、
もう一度元に戻して、
立ててこの絵を見てください。
どうですか?
黄色いマフラーを首にかけた人物の後姿が見えてきませんか?
ショートカットの女性かもしれませんね。
なで肩ですから。
(※ 《横たわる裸婦》は、このページの下部にあります。)

実はこの絵はできたてのホヤホヤで、
11月上旬に完成し、
下旬にギャラリー倉敷で開催した『陽のあたる岡・小春日和展』に出品していた作品なのです。
この絵が生まれた経緯をお話しすると…。
10月18日に姫路市立美術館で開かれていた『リアルのゆくえ』という展覧会を見に行った時のことです。
展示を見終えて関連書籍を見ていた時、
チラッと右目に入るものがありました。
何かよくわからないけれど、
気になるイメージだったのでよく見ると、
それは絵ハガキ・スタンドに置かれた絵ハガキだったのです。
遠目に絵ハガキであることは分かりましたが、
見たこともない絵ですし、
人の後姿のようでいてそうでもないような、
実に曖昧なイメージでしたから不思議に思い、
その正体を確かめるべく絵ハガキに近づきました。
するとそれはフェルナン・クノップフという画家の《裸体習作》の絵ハガキで、
本来の横向きではなく、
縦向きに置かれていたために起きた私の錯覚だったのです。
私はこの出来事にちょっと興奮するとともに、
ひとつの素敵なアイディアが閃きました。
よし!この絵をダブルイメージとして描いてみよう、というアイディアです。

早速家に帰ってから作画に取り組みました。
絵ハガキを見ながらデッサンをして、
試行錯誤した結果、
裸婦の顔をあまり見えないように角度を修整し、
髪の色を金髪にして、
首にかけたマフラーに見えるように強調しました。
裸婦の腕のポーズも少し変えました。
苦労したのは、
「横たわる裸婦」のイメージがなかなか弱まってくれないことでした。
結局、裸婦の肌の色調を落とすことである程度弱めることはできましたが、
画面を立てても、
「横たわる裸婦」のイメージは見えるのです。
しかし、それもいいかなと思いました。
横に倒さなくてももうひとつのイメージが見えることは、
ダブルイメージとしては悪いことではないからです。
後は私が錯覚した「もうひとつのイメージ」に気付いてもらえるかです。
そこで題名を《黄色いマフラー》としたのです。
皆さんには「もうひとつのイメージ」が見えたでしょうか?
皆さんが私と同じ体験ができたなら、この絵は成功なのですが…。

泉谷 淑夫

 

 

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