- – 織姫 –
- – 彦星 –
微風
花の絵は私の作品群の中では少なめである。
しかし向日葵と蓮だけは近年の個展では2,3点ずつは発表しているし、
実に長きに渡って描き続けてもいる。
それほど向日葵と蓮の花には強く惹かれるものがある。
両者に共通するのは、厳しい猛暑に襲われる真夏の季節に、
長い茎の上に大輪の花を咲かせる点である。
そこに自然のたくましい生命力や無限のエネルギーを感じるのは
私だけではないだろう。
時折、野生の向日葵で茎に支え棒が取り付けられてないものも見かける。
自力でバランスよく立っているのである。
野外だから強い風にあおられることもあるのだが、
そんな時は大きな葉をしなやかに躍らせて、巧みに風をやり過ごすのである。
心から向日葵のたくましさとしなやかさに拍手を送りたくなる瞬間である。
まだ若い向日葵がそよ風に気持ちよさそうに揺れている場面に出くわすこともある。
黄色い花びらのいくつかが、
まるで女性の前髪のようにひるがえって、どきっとしたりする。
そういえば向日葵の花は、顔のようにも見える。
ということは後姿もあることになる。
ふだんはあまり注意してみない向日葵の後姿、
ところがこれがまたなかなか魅力的なのである。
自然はやはり美しいものを創り出す天才である。
泉谷 淑夫