Gallery -皐月-《世界一有名な婦人に抱かれた猫》

 

「世界一有名な婦人に抱かれた猫」

今月の一枚は、とんでもない絵です(笑)。

どの辺りが「とんでもない」のかというと、
絵の発想というか、
コンセプトの部分が、
です。

私の性格が成せる業なのでしょうが、
時々私は絵の上でとんでもないことをしたくなるのです。

昔は敬愛するミレーの《落ち穂拾い》に目を付け、
横並びの三人の農婦を縦一列に積んでみたり、

近年は尊敬するフェルメールの絵を勝手にトリミングして、
我が愛猫をこっそり忍びこませたりしました。

これらは私の「名画遊び」の例ですが、
やってみると結構面白くて、やみつきになるのです。

そして今回、

ついに恐れ多い「あの方」の「あの絵」に

猫を

入れてしまったのです。

「あの方」の「あの絵」に関しては、
すでに顔を寝かせて、
「人物のいる風景」に変えてしまうという遊びをしていますので、
初めてというわけではありません。

「顔」ではすでに遊んでしまったので、
今回はあえて顔を外すという、
これまた暴挙に到った次第です。

恐れ多い行為ですので、
せめて題名は控えめにということで、
よく知られたお名前は出さずに

《世界一有名な婦人に抱かれた猫》

とさせていただきました。

作画のきっかけは、
「あの方」の画集に載っていた、
首から上をカットした部分図です。
組んだ手の描写に注目させようというねらいでしょう。

ところがそれを目にした時、
ひねくれものの私には、
組んだ両腕の間の空間が黒い衣装以外何もなくて、
さびしそうに見えたのです。

しばらく見ていたら、
「そうだ!猫を抱かせてあげたらどうだろう。」
という素敵なアイディアが浮かびました。
そうなるともう止まりません。
そこに上手く納まりそうな愛猫の写真を探しました。
そしていくつかの候補の中から、
最も毅然として風格のあるゴロ太を選びました。

「あの絵」の模写はそれなりに大変で、
何度も薄塗りのグラッシを重ねる手法で描きました。
いちばん難しかったのは、
両腕の間に自然な感じで猫を納める工夫でした。
大きさ、角度、位置などを描く前に何度も試行錯誤し、
この形に納まりました。

いかがですか、
作者としては上手く納まっていると思うのですが。

これまで自宅のギャラリーで、
ごく少数の人に公開しましたが、反応は上々でした。
皆さん心から笑ってくださったので、
しかけは成功と言えそうです。

11月の個展で多くの人に見てもらうのが、今から楽しみです。

それに先駆け岡山では、
5月10日からの『陽のあたる岡第6回展』に出品しますので、
ぜひご覧ください。

F6号ですから、
大きな絵ではありませんが楕円形の重厚な額に入っているので、
なかなか風格があります。
やはり「あの方」の「あの絵」の力でしょうか?

ところで、この絵が何故5月の絵に選ばれたのか、です。

それは“世界一有名な絵”と称される「あの方」の「あの絵」が、
42年前のこの時期に初来日し、
上野で展示されていたからなのです。
正確には1974年4月20日~6月10日の期間に
東京国立博物館でお披露目されました。

「あの絵」がフランス国外に出るのはアメリカに次いで2度目、
日本では初公開ということで大変な話題となり、
「あの絵」1点だけを見るために、
なんと150万人もの人が詰めかけたのです。

一日平均では3万人超ですから、
毎日小さな町がひとつ空留守になるくらいの勢いです。

会場入り口は連日長蛇の列で、
並んだ末に「あの絵」に対面できる時間はわずか20秒ということで、
これも話題を呼びました。

私はというと、その時大学4年生で、
見に行く時間はたっぷりとあったのですが、
まだ「あの絵」の魅力に目覚めていなかったのと、
単純に並ぶのが面倒だったということもあり、
結局スルーしてしまいました。

翌年の夏に初めてルーブル美術館を訪れて、
「あの絵」との御対面もかなったのですが、
あっけないほど近くで見られて、
特別な感動もなく、
ただ名画であることを確認して終わりでした。

「あの方」の凄さがわかるには、
あまりにも若すぎたということでしょう。

ちなみにその頃私が入れ込んでいた画家は、
カラヴァッジョであり、
ルーベンスであり、
そしてダリでした。

泉谷 淑夫

 

《世界一有名な婦人に抱かれた猫》

《世界一有名な婦人に抱かれた猫》

 

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